松沢哲郎
松沢哲郎
霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院 プログラムコーディネーター
高等研究院・特別教授/霊長類研究所・兼任教授

ワイルドライフサイエンスの確立をめざして

人間と動物という二分法から決別するときだと思います。人間は動物界の一員だからです。人間と自然という対置からも決別するときだと思います。人間は自然の一部だからです。日本人の文化的背景に仏教があります。仏教的な世界観では、生命は流転します。来世では虫にもなるし、また鳥にもなる。それがさらに人間にもなる。この地球上にすむ、そうした時空を超えた生命のつながりを「ワイルドライフ」と表現しました。人間を含めた自然そのもののことです。野外研究を基盤に、ワイルドライフを探求する。本事業は、そうした新しい学問としての「ワイルドライフサイエンス」の確立をめざします。この自然のまるごと全体と、人間の本性を知る試みです。

足立幾磨
足立 幾磨
霊長類研究所・助教

自分自身を知る、学びの場所です

動物を知ること、それは自分自身を知ること。そして人間とそれ以外の動物の共生のあり方を知ること。毎日100-300種もの生物が絶滅し続けていると言われています。本プログラムでは、フィールドワークを共通基盤として、動物および彼らを取り巻く世界を分析するための高度な知識と技術やマネジメント能力の涵養に力を入れています。大量絶滅時代に突入した世界の救世主となるべきグローバルリーダーを目指す学生の参加を期待します。

湯本貴和
湯本貴和
霊長類研究所・教授

人間とそれ以外の動物の共生をメインストリームに!

生態系劣化が人間社会の持続性を脅かしています。そうした共通認識のもと、人間社会と野生生物の共存を推進すべき国際的な転機を迎えています。しかし、保全の現場では圧倒的に人材が足りません。また人材が足りないという意識も希薄です。このプログラムでは、地球上のさまざまな地域で人間福利の向上と生態系の保全を両立させるために、必要なアイデアやネットワークを創りあげ、人間とそれ以外の動物との共生を主流化することをめざします。

今井啓雄
今井啓雄
霊長類研究所・准教授

いまこそゲノムと表現型のリンケージ

霊長類の研究でもゲノム解析が進んできました。単なる塩基配列ではなく、そこに生物学的な意義づけをしていくことが今後の課題です。とくに環境応答に関わる感覚受容体(視覚・味覚・嗅覚等)や、関連酵素に着目しました。分子レベルの知見から、細胞・行動・生態レベルの研究を展開しています。これらのセンサーを通して動物たちを理解することにより、彼らに適した環境を保全し再構築する手がかりになると期待しています。

清水展
清水展
東南アジア研究所・教授

フィールドワークは、目と耳と口と胃と足と、すべてを使うから面白くて充実です。

北ルソンの先住民(アエタとイフガオ)の村などで、文化人類学の長期の滞在調査をしました。村から日本に戻り、自身のデータや経験と照らし合わせて、やっと初めて、学部や大学院で学んだ民族誌や理論が、確かな手触りをもって理解できるようになりました。先行研究や理論と自身の調査資料とのあいだで思考の往復運動が始まった、というわけです。しかもフィールドでの経験が、日本の常識と偏見から、わたしを解き放して自由にしてくれました。

松田一希
松田一希
中部大学創発学術院・准教授/野生動物研究センター・特任准教授

フィールドワークは生きた学問

フィールドワークは現地で起こっていることを肌で感じる,その臨場感が魅力であり,常に新鮮な情報を提供できる生きた学問です。森林破壊が著しい熱帯地域では、野生動物と環境問題は切っても切り離せない問題です。そして環境問題と一言にいっても,解決にはその社会的・文化的また経済的背景を含めた取り組みが求められます。そうした現場で、多様な価値観を受けいれて活躍できる、柔軟で粘りのある人材の育成を目指します。

伊谷原一
伊谷原一
野生動物研究センター・教授

人間の未来に向けて

人間は社会的動物です。個は他者やそれを取り巻く環境と切り離して生きていくことはできません。「人間と自然」「人間と動物」という二分法からは脱却し、自然界の中で人間とはどのような存在なのか、わたしたちはどこから来てどこへ行こうとしているのかについて考えなければなりません。さまざまな野生動物の生きる世界を実感し、そして彼らの真の姿に触れることで、新たな自然観や生命観が生まれるはずです。未来を創造する旅に出かけましょう。

平田聡
平田聡
野生動物研究センター・教授

進化の隣人に豊かな暮らしを

京都大学熊本サンクチュアリに、ヒトの進化の隣人であるチンパンジーとボノボが暮らしています。「動物福祉学」の確立と実践のための教育研究施設です。彼らの心と行動を研究し、人間の本性の進化的な理解を目指しています。そしてその研究成果を、彼らの安寧な暮らしと、生活の質の向上に反映させる取り組みをおこなっています。ヒトとヒト以外の動物が共に生き、幸せに暮らせる世界の実現のために、多くの力が集まることを期待します。

松林公蔵
松林公蔵
東南アジア研究所・連携教授

病院医学からフィールド医学へ

医療、とりわけ高齢者の医療は、病院のみでは完結しません。医療スタッフのほうが、患者が住む家庭、コミュニティーを訪ね、疾病・老化のありさまを自然環境、文化背景のなかで解決してゆく「フィールド医学」を実践しています。フィールドとしては、高知県を基点に、東南アジア・東アジアの諸地域を対象としています。とくに2010年からは、ブータンにおける地域高齢者のヘルスケアー・デザイン計画に取り組んでいます。

幸島司郎
幸島司郎
野生動物研究センター・教授

野生動物を知り共に生きる

現在、多くの野生動物が絶滅の危機にあります。その保全や人間との共存のためにまず必要なことは、彼らのことを良く知ることです。彼らの生き方や都合を理解することなしに、保全や共存をはかることなど不可能です。また、野生動物を見ること、知ること、理解することは、人々を幸せにし、心を豊かにしてくれると信じています。このプログラムでは、世界の野生動物保全の現場で活躍し、このような価値観を世界に広める人材の育成をめざします。

平井啓久
平井啓久
霊長類研究所・教授

ゲノム科学とフィールド科学の融合

ゲノムや染色体は遺伝物質で生物誕生以来の個体や集団の歴史を刻んでいます。その遺伝物質を系統的に比較することや個体間ならびに集団間で比較することで、個体や集団の生い立ちを客観的に推測することができます。その推進をフィールド科学と融合すれば、霊長類の進化の解明や、ワイルドライフ・サイエンスの基盤の強化につながるでしょう。それはまた、洞察力の先鋭化や、国際的・学際的・人際的教育研究事業の推進に極めて有効だと確信します。

阿形清和
阿形清和
学習院大学大学院自然科学研究科生命科学専攻・教授/京都大学野生動物研究センター・特任教授

これこそ京大、という教育の方法があります

わたしがまだ京大の大学院生だったころのことです。実験データを先生方にお見せしました。もちろん同じデータを見せたのですが、お一人ずつまったく違うコメントや示唆をくださいました。ときには正反対の意見です。この体験を通じて、科学はまさに個人の営みなのだとはっきり自覚しました。科学における解釈には個人の視点が色濃く反映されます。異なる背景をもった研究者とふれあい、意見を交わす。それこそが重要な学びの場なのだと思います。

アンドリュー・マッキントッシュ

自然のなかで孤立しているものはひとつとして無い

自然というものをエレガントに表現したこの引用句は、レイチェル・カールソンの1962年の著作『沈黙の春』のものです。地球上の生命が、相互にいかに深く結びつきあっているかを表わしています。50年後の今日、この繊細な生態系を侵食し続けています。数多の科学的証拠が警鐘を鳴らしていますが止まりません。本プログラムを通じて、環境や生物の多様性に配慮できる若者を育てたいと思います。科学的手法を身につけ、実証的な証拠にもとづいた実践活動をめざす人材です。

坂本龍太
坂本龍太
東南アジア研究所・准教授

共に学びたい

ブータン王国において、生活の場に根ざした持続可能な高齢者健診体制の構築に向けて活動してきました。指導者には、現場の声をしっかり汲み取り、そこで暮らす住民の信条の理解に努め、様々な条件を鑑みて明確な目標を立てることが求められると考えます。そのためには、実際に現場を体験するのが王道でしょう。本学には、強い連携を持つフィールドが、国内に止まらず、地球上の様々な地域にあります。皆さんと共に成長したいと考えています。

村山美穂
村山美穂
野生動物研究センター・教授

分子から生態情報を読み解く

直接観察がむずかしい野生動物でも、糞や毛などの分析から、行動や生態など保全に有用な情報を得ることができます。DNAの解析により、系統や多様性や血縁関係や個性、さらには食物の種類などがわかります。またホルモンの測定により、繁殖状態やストレス状況などの情報も得られます。多様な動物種を対象に、DNAや細胞のデータベースを作製し、分子レベルでの解析技術を駆使して、フィールドと実験室をつなぐ学際的な研究をめざします。

中村美穂
野生動物研究センター・客員准教授

撮る、分析する、見せる

自然科学映像の制作に30年間携わってきました。撮影機材の小型軽量化、高画質化が加速度的に進んでいます。誰もが手軽に使えるハードだからこそ、使い方で差が出ます。技術的に可能になったからこそとれるデータがあり、映像で見せるからこそ伝わる事象があります。研究者にとってはもちろん論文が重要な目標ですが、研究対象の保護や自然環境の保全には、広く一般に理解され、共感を得る必要があります。知識も資源も「共有」が鍵です。

David Hill
Professor, CICASP

Training a new generation of leaders to tackle environmental challenges

The enormous impact that human activities are having on the natural environment and its predicted long-term consequences for the biosphere has been widely acknowledged by governments, businesses and the general public alike. However, effective action to counter environmental degradation falls far short of what is required to halt, or even slow, the continuing loss of biodiversity and ecosystem services. With the Leading Graduate Program in Primatology and Wildlife Science (PWS) we aim to produce a new generation of leaders who are equipped to tackle these challenges. PWS graduates will be trained in aspects of field biology, conservation and wildlife science, and will be instilled with the knowledge and motivation required to promote the harmonious coexistence of humans and wildlife.

友永雅己
霊長類研究所・教授

飼育下と野生をつなぐ

本プログラムの一つの柱は、野生と飼育下の動物をつなぐ人材の育成にあります。飼育下に暮らす動物たちは野生からの大使であり、動物園や水族館は私たちを野生へと誘う「どこでもドア」です。このような自然への「橋」を積極的に活用し、野生と飼育下を縦横に闊歩し、すべての野生動物に思いをはせ、彼らの心を理解し、彼らとの共生への道を積極的に探っていく。このような人材が本プログラムから世界に羽ばたいていくことを期待しています。

古市剛史
霊長類研究所・教授

Welcome for field studies of chimpanzees and bonobos, and conservation of their habitat forest.

My research interest encompases social behavior, life history, and ecology of non-human primates and humans. My research carrior started with Japanese macaques in Shimokita peninsular and on Yakushima Island, and I am currently engaged in field study of bonobos at Wamba in DR Congo and chimpanzees in the Kalinzu Forest, Uganda. I am also working for conservation of habitat forest of primates and other endangered animals, as a member of Species Survival Commission of the International Union for Conservation of Natire.

Chie HASHIMOTO
Assistant Professor, Primate Research Institute

Enjoy the world of wild chimpanzees

Although chimpanzees are well known as intelligent, political, and sometimes aggressive animals, they are also fascinating animals in terms of tenderness, politeness, and thoughtful behaviors. Mothers are extremely affectionate to their infants, and I am always heeled when I observe mothers and infants spending a calm life in a rich African forest. Our study site, Kalinzu Forest in Uganda, is one of the closest sites to see wild chimpanzees. Please visit us to experience the world of wild chimpanzees.

杉浦秀樹
野生動物研究センター・准教授

フィールドワークの現場を実感して下さい

野生動物の調査は、たいていは田舎の小さな村で行われます。野生動物を調査し、村人と交流するのは、本当に面白いものです。しかし、動物を追い求めて、調査地と深く関わるにつれ、狩猟や、開発といった問題も見えてくるでしょう。それらの問題は、村の中だけの問題ではなく、世界中の保全の現場に共通するグローバルな問題も多くあります。野生動物の素晴らしさと共に、彼らの置かれている状況や、そこに住む人々の生活を実感して下さい。

林美里
霊長類研究所・助教

言葉をもたない存在の代弁者に

チンパンジーやオランウータン、ヒトの子どもを研究する醍醐味は、彼らと仲良くなれること。彼らのふるまいかたをじっくり見ていれば、彼らの心の中が少しずつわかってきます。言葉をつかって話すことができない彼らの思いを代弁できるようになりたいと、日々の研究をつづけています。物を道具として使い、親やなかまたちとかかわる豊かなくらしの中で発揮される知性と、その発達を調べることで、ヒトの起源が見えてきます。

森村成樹
野生動物研究センター・特定准教授

野生動物の「生きる」を考える

たくさんの野生動物が、動物園や研究施設など様々なところで飼育されています。展示や実験に使えなくなり行き場を失うものもいます。また環境破壊によって自然の生息地が分断され、野生動物の暮らす小さい森や水辺を取り囲むように人間が活動するようになると、人間との関わりなしには生活できなくなる“動物園化”が進みます。そうした動物に野生本来の安寧な生活を保障するための研究と実践的活動に取り組んでいます。

山極寿一
京都大学総長

総合学としてのフィールドワーク

フィールドワークとは研究対象に「語らせる」技術です。植物に、動物に、そして波打つ地層に真実を語らせる。そのためには、どうしたら彼らが語ってくれるのかを考えねばなりません。その対象の世界へ身を投じて体験したり、それをよく知っている人に聞いたり、時にはまったく別の学問分野の方法を適用することも必要になります。その過程で多くのことを学び、自分の考えを説得力を持って「語る」能力を磨く。それを一人ではなく、みんなで楽しくやりながら、世界へ通じる窓を開けようと思っています。

Fred B. Bercovitch
Professor, CICASP

We are the guardians of Mother Nature

Our existence on the planet has been only an infinitesimal span when compared with the duration of time since the origin of Life on Earth. Yet within that short time period, we have obliterated species, poisoned the atmosphere, scarred the landscape, and polluted our key source of Mother's Milk — fresh water. The Leading Graduate Program in Primatology and Wildlife Science is designed to provide research and education for the next generation of students who want to make a difference. To preserve our precious planet, and promote a more harmonious existence between human beings and our fellow inhabits of the globe, we have created a unique academic program integrating multiple disciplines, such as Conservation Biology, Animal Welfare, Evolutionary Anthropology, Comparative Cognition, Socioecology, Animal Behavior, and Social Outreach. We invite you to join us.

Michael A. HUFFMAN
Associate Professor, Primate Research Institute

The complex fabric of nature is based on simple stitches.

In nature organism do not live in vacuums, within their ecological and social niche they interact with other animals, plants and pathogens at the macro and micro level. Understanding the complexities of these interactions requires multi-diciplinary research. Join PWS and find your niche, whether it be basic science or conservation, and contribute to deciphering and preserving the mysteries of the animal kingdom.

服部 裕子
CICASP, 助教

リズムでつながる自然と私たち

ダンスや合唱に見られるように、リズムを合わせることで私たちは他者と仲良くなる術を進化させてきました。また他の多くの動物も、その仲間や環境とつながるために同調行動をとりいれています。リズムはどのようにして私たちや他の動物達を結びつけているのか。 チンパンジーや野生動物のリズム同調を調べることで、結びつきの多様性と進化的起源の解明を目指しています。また、そうした研究をとおして、飼育下での認知的なエンリッチメントにも取り組みたいと思っています。

岸田 拓士
野生動物研究センター・ゲノム科学助教

野生動物をゲノムから理解する

全ての生物は、4つの文字A,T,G,Cからなるゲノムの情報に基づいて体や脳が形成され、この情報を子孫へと受け継いでいきます。私たち哺乳類のゲノムは30億文字にもおよびますが、4進法で書かれたこの長大な、しかし有限の数列の中に、個々の動物の能力や集団構造、進化などに関する情報がぎっしりと隠されています。直接観察だけでは見ることができない野生動物の姿を、ゲノム解析というスポットライトで照らす。'Wildlife-genomics'という新たな分野を、共に切り開いていきましょう。

木下こづえ
霊長類研究所・助教 

目に見えるすべてのことは、メッセージ

動物の研究を通して見えるすべてのことは、彼らや彼らを取り囲む環境からのメッセージです。私は、繁殖生理学の視点から、動物たちと関わっています。彼らは、安心して子供を残せる環境でなければ繁殖はしません。繁殖しない場合、彼らからのメッセージを読み解き、それに応える必要があります。本プログラムは様々な分野の方が関わっています。ぜひ、多様な分野に触れ、彼らからの複雑なメッセージを読み解く力を磨いてください。彼らからのメッセージを訳し、人に伝え、次に生かすことが私たちの使命であると考えています。

中川尚史
理学研究科・生物科学専攻・教授
岡本宗裕
霊長類研究所・教授
宮部貴子
霊長類研究所・助教
江木直子
霊長類研究所・助教
吉川左紀子
こころの未来研究センター・教授
明和政子
教育学研究科・教育科学専攻・教授
藤澤道子
東南アジア研究所・連携准教授
毛利衛
日本科学未来館館長 / 京都大学特任教授
西田睦
琉球大学理事(研究・企画戦略担当), 副学長 / 京都大学特任教授
岡安直比
公益財団法人日本モンキーセンター国際保全事業部部長/京都大学野生動物研究センター特任教授/
WWF Cameroon Lobeke Associated Researcher

しなやかに、したたかに - Think Globally, Act Locally

国際的な自然保護の現場は、今や経済のグローバリゼーションとの闘いといった様相を呈しています。日本のたこ焼きブームが、モロッコのタコを絶滅の危機に追い込んだりするのです。人類が生まれ、400万年かかって30億人になり、その後たった40年で60億人になりました。悲鳴を上げている地球と、人間社会のバランスを取るために、ゾウに乗ってジャングルをパトロールしながら、国際条約交渉のフィクサーになる、そんな人材が求められています。

星川茂一
元京都市副市長 / 京都大学特任教授

自治体行財政の仕組みや当面する諸課題について考える

2013年3月まで京都市職員でした。副市長として2008年の京都市動物園と京大野生動物研究センターWRCの連携協定に関わりました。5年をへて2013年4月には動物園に「生き物学び研究センター」を開設。そのセンター長にWRCの田中正之さんを迎えることができました。動物園や水族館は野生動物研究の重要なフィールドのひとつであり、同時にその充実も強く求められています。大学院で学び、地方公共団体で活躍する。そうした人材に期待したいと思います。

堀江 正彦
明治大学特任教授、地球環境問題担当大使、世界自然保護連合(IUCN)理事/ 京都大学特任教授

地球温暖化問題や生物多様性保全を始めとする地球環境問題は、この地球の死活的な問題となっている。これらの問題については、バランスの取れた解決を見いだす必要がある。気候変動枠組条約(UNFCCC)や生物多様性条約(CBD)を始めとする国際条約の下で繰り広げられる交渉は、極めて厳しく世界各国の弛まぬ努力を必要とする。講義では、気候変動問題に関する交渉に焦点を当て、日本がどのような努力を行ってきているか、開発途上国の努力を如何にサポートしてきているかなどを説明し、この「母なる大地」を保護する国際的な努力に参加してもらえるような機会を提供したい。

田中正之
京都市動物園 生き物・学び・研究センター長 / 京都大学特任教授

動物園を学びの場に

京都市動物園に「生き物・学び・研究センター」ができました。このセンターは,動物について知りたいことを自ら調べる場所です。わたしたちが調べたことを,いろいろなメディアを使って紹介していきたいと思います。生き物・学び・研究センターは,「学び方を学べる」ことをめざします。動物園の職員みずからが、動物について調べます。その姿を見て,その話しを聞くことで,動物に興味をもつ子どもたちが憧れるような将来のモデルになりたいと思います。

杉山茂
静岡大学情報学部情報社会学科・准教授 / 特任准教授

フィールドの面白さを知ろう!

京大山岳部笹ヶ峰ヒュッテで学生の皆さんをお迎えします。日本では稀少になった亜高山帯の広大な草地環境をめぐる多様な植生とともに多種多様な動物が観察できます。しかし、皆さんに体験していただきたいことは、四季を通じたフィールドの「面白さ」です。日本における山岳スキーの黎明ともに1928年に竣工したヒュッテは、多くのフィールドワーカーや山岳家を輩出しています。皆さんもそれぞれの「面白さ」を発見していただけるでしょう。

山本真也
神戸大学・准教授 / 特任准教授

共に生きる仲間への共感

チンパンジーやボノボを見ていると、こちらが観察されているように感じることがあります。私たちは、彼らの眼を通して、「人間とはなにか」を考えているのかもしれません。人間は自分独りでは生きていけない動物です。他者を認め、自己を知る。すすんで他者に手を差し伸べる。このプログラムでは、フィールドと実験室という垣根を飛び越えて多様な専門家が集っています。生物多様性への広く深い理解が未来を変える原動力になると信じています。

Yamanashi Yumi
山梨 裕美
野生動物研究センター・特定助教

身近な動物をとおして人と自然の関係を考える

動物園など、わたしたちの身近にたくさんの野生動物が暮らしています。そこでくらす動物が心も体も健康に暮らせるような環境を整備するための基礎的・応用的な研究を、さまざまな学問分野で培われた知識をもとにおこなっています。動物種に合わせた環境整備は動物福祉はもちろん、域外保全、研究、教育の基盤になります。その実現のためには野生での生理・生態や動物種の発達、認知特性など動物の多面的な理解が欠かせません。また、さまざまな制約が多い飼育下ならではのくらしのあり方を実践的に模索する必要もあります。難題も多いですが、わたしたちに身近な動物たちのおもいがけない姿に出会えるかもしれません。

青木秀樹
お茶の水総合法律事務所・弁護士 / 京都大学特任教授
狩野文浩
狩野文浩
野生動物研究センター・特定助教

京都大学熊本サンクチュアリ(KS)に、ヒトに最も進化的に近い霊長類、チンパンジーとボノボが暮らしています。チンパンジーとボノボは1-2百万年前、進化的にはごく最近分岐したと考えられており、研究者の中でも長い間同種と考えられていました。近年の研究から、チンパンジーとボノボは認知・感情において興味深い違いがあることが分かってきました。たとえば、ボノボは他個体に比較的寛容で、受容性の高い行動を示しますが、チンパンジーは他個体に対して時に苛烈と言えるほどの暴力を示します。ヒトの心の起源に二つの異なったイメージがあるわけです。しかし、なぜこの二種の心は違うのか、進化の中でどのように違いが生まれたのか、ほとんど分かっていません。今KSでは、その探求に向けて研究がスタートしています。

中村 美知夫
野生動物研究センター・准教授

フィールドを楽しみましょう

タンザニアのマハレ山塊国立公園で野生のチンパンジーを対象に長期調査をおこなっています。マハレはチンパンジーの長期調査地として有名なところですが、最近では、ヒョウなどの大型哺乳動物の研究もおこなわれています。動物のことを知るためには、実際に動物が暮らす環境の中で観察をおこなうことが不可欠です。フィールド調査は大変な側面もありますが、楽しいものでもあります。ぜひ皆さんもフィールドを楽しんで下さい。

山越言
アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授

地域の人々のことを深く理解しよう

人為を排した自然保護区は野生動物の保全にとって理想的な制度かもしれません。しかし、とくに経済発展の途上にある地域では、新たに保護区の面積を増やすことはとても困難な課題です。保全研究や保全行政の現場では、例えば日本の里山の保全のように、人々の暮らしによる影響を受けた二次的景観の中で生きる野生動物のことを知り、そのような生態系を保全することが重視されるようになりました。野生動物保全の実現のためには、地域の人々の暮らしや文化に深い理解を持つことがますます重要になっていくでしょう。

Claire WATSON
JSPS Research Fellow, CICASP

Understanding our evolutionary past; safeguarding the future

To better understand ourselves as humans, we can study nonhuman primates; living links to our evolutionary past. Behavioural research and field observation of apes and monkeys can provide a clearer picture of the evolution of human cognition and culture. Just as researching nonhuman primates can help us to understand our past, it is our responsibility to ensure their future. An enormous number of primate species are either critically endangered, endangered or vulnerable. The Leading Graduate Program in Primatology and Wildlife Science (PWS) aims to produce effective professionals trained in conservation and in promoting public awareness.

早川 卓志
早川 卓志
霊長類研究所・ワイルドライフサイエンス(名古屋鉄道)寄附研究部門・特定助教(JMCキュレーター)

あなただけの野生動物研究を!

まずはフィールドに出かけ、あるいは動物園に出かけ、じっくりと動物のことを観察してください。なぜそんなにも自由自在に森を動き回れるのか。なぜそんなにも迅速に獲物を見つけ、捕らえることができるのか。なぜそんなにも群れたがり、また離れたがるのか。そんな些細な疑問を持った瞬間に、あなただけの野生動物研究が始まります。行動学、生理学、生態学、遺伝学など、あなたの疑問に答える研究手法はたくさんあります。多様な手法を組合わせて、総合的に野生動物の暮らしの秘密を読み解く研究のお手伝いができればと思います。

滝澤玲子
滝澤 玲子
野生動物研究センター 特定助教


環境省の自然系職員として、本省や現地勤務(札幌・くじゅう・やんばる)を経験してきました。地域の自然や野生生物を守るのに一番大事なのは、地域の人々のちからです。もし、調査フィールドの自然や対象とする野生生物を守りたいと感じたなら、是非地元のおっちゃんおばちゃん子供たちと交流してください。最初は挨拶から、そして、自分のやっていることの紹介や感じたおもしろさを話すだけでも。面倒な気持ちから一歩進めて。きっと、新たな世界が広がりますよ。

阿部 秀明
野生動物研究センター 特定助教

生物を多角的に理解する

生物の形態や行動の多様性について、DNA・遺伝子・ゲノムというキーワードで解き明かそうとする試みが増えています。たしかに「どの」遺伝子が、「どのように」変化したのかは重要ですが、生物種をトータルに理解するためには、それらの内在的要因のほかにも、環境要因や社会性要因などの複合的要因を考える必要があります。このプログラムでは、ラボワークとフィールドワークの両面から、野生動物を多角的に学ぶことができます。

大渕 希郷
野生動物研究センター・特定助教 / 日本モンキーセンター・キュレーター

What is Science? What is Wildlife?

藻類や琵琶湖の淡水魚、爬虫類の進化についてフィールドワークをしながら学生時代を過ごし、上野動物園・飼育展示係、日本科学未来館・科学コミュニケーターの職を経験してきました。「科学って何?」「野生動物って何?」と訊かれたとき、みなさんはどう答えますか?その答えは、一般の方々はじめ、いろんな人と科学コミュニケーションをする中でつかみ取ってください。つかみ取った自分なりの「答え」=「アイデンティティ」は、きっと世界への窓を開ける鍵になるはずです。僕自身もみなさんや野生動物たちと対話がしたいと思っています!

川上 文人
野生動物研究センター・特定助教

ヒトとヒト以外の霊長類を対象に,笑顔の観察をおこなっています。笑顔は単なる快感情の表れだけではなく,他者との関係を平穏に保つ機能も持っています。日々どのような場面で笑顔は使われるのでしょうか。そこには生き物の社会的知性が隠されていると考えています。