本学位プログラムにより「養成すべき人材像」については、以下のように定める。霊長類学は日本から世界に向けて発信し日本が世界の第一線を保持してきた稀有な学問である。霊長類学を基盤にして、大型の絶滅危惧種を対象にした「ワイルドライフサイエンス」という新興の学問分野を確立しつつある。そこで必要とされているのは、フィールドワークを共通基盤として、人間のこころ・からだ・くらし・ゲノムといった本性全体の理解を深めつつ、「地球社会の調和ある共存」という京都大学の憲章が掲げる理念を実現する実践活動である。ワイルドライフすなわち生き物すべての生存の連環を科学する分野で、フィールドワークによって培った「知行合一」の精神によって、学問と実践をつなぐグローバルリーダーの人材育成がいまこそ求められている。霊長類学を基盤とした研究が学問の最先端を担っていながら、欧米にあって日本に明確に欠けているものが3つある。①生物保全の専門家として国際機関・NGO等で働く若手人材の養成、②博物館ならびに動物園・水族館等におけるキュレーター養成とフィールドミュージアムの実現、③一国まるごとを対象としたアウトリーチ活動すなわち長い歳月をかけて特定の国との結びつきを深める活動、である。その3つの欠陥を逆に将来の伸びしろと考えたい。研究のための研究ではない。研究・教育・実践の新しいニッチとして、国際機関やNGOで、博物館や動物園等で、そして諸外国において、日本の眼に見える貢献を果たす人材を育成したい。なお、日本は先進国で唯一、霊長類が生息する国であり、また、野生のクマ、シカ、ニホンザルなどの中・大型哺乳動物が人間との軋轢を高めている。このような実態を踏まえ、国内のワイルドライフに対しても、世界に誇れる保全管理体制の構築・実践を行う人材の育成を図る。

平成26年3月14日制定(協議員会承認)